Heatsinks Technical Notes
ヒートシンク技術ノート

ヒートシンクは半導体素子等の放熱を担う部品です。今回は適切にご選定頂くための放熱に関する基本的な情報を説明いたします。

ヒートシンクのイメージ写真

1.ヒートシンクに必要な性能の計算

ヒートシンクの性能は熱抵抗値(℃/W 又は K/W)で示します。熱抵抗値とは「物体中における熱の流れにくさ」を表す数値ですので、 ヒートシンクにおいては「1W(ワット)あたり何℃温度が上昇するか」を意味します。つまり熱抵抗値が小さいほどヒートシンクの放熱性能は 高いことになります。

ではヒートシンクの熱抵抗値を求めるにはどんな条件が必要かというと、下記の通りとなります。

1)消費電力(実際の素子の電力ロス分が最も好ましい)

2)ΔT(℃)(素子最大温度 – 周囲温度)

実は、多くのお客様は上記2条を既にご存知です。あとは、この2条件を割れば良いだけです。

【必要な熱抵抗値の計算式】

$$熱抵抗値(℃/W)= {{ΔT(℃)} \over {W}}$$

  • $ΔT$ = 素子最大温度一周囲温度
  • $W$ = 消費電力

例えば、ΔT=60℃・消費電力 10W の場合、必要な熱抵抗値は

$$60℃÷10W=6℃/W$$

となります。

なお、素子とヒートシンクの間に、熱伝導性シリコンシートなどギャップフィラーを ご使用する場合は、ギャップフィラーの熱抵抗値を上記 計算から更に差し引いてお考え下さい。

以上から、必要な熱抵抗値が小さければ小さいほどヒートシンクには、高い放熱性能が要求 される(ヒートシンクのサイズは大きくなる)という ことが、おわかり頂けると思います。

【ポイント】

必要な熱抵抗値に対して、ヒートシンクのサイズがその許容スペースに合致しない場合は、消費電力を実際の電力ロス分で検討が可能かを お試し頂ければと思います。 素子の中で熱に替わるのは電力ロス分です。

お客様の設計条件によって大きく異なる場合がある要素ですが、この部分を見直すことで上記計算式の分母が小さくなる、つまり必要な熱抵抗値を 大きくできる=ヒートシンクを小型にできる、可能性を秘めています。

2.ヒートシンクの配置と冷却方式

ここからは、ヒートシンクのご検討において放熱性能に関わる主な注意点を説明いたします。

2-1)全般

自然空冷方式やファンによる強制空冷方式は、共に周囲温度の影響を強く受けます。

1項における熱抵抗値の計算は大気が無限に解放された、いわば最もひいき目のデータです。筐体のサイズや筐体の開口率によっては熱が筐体内部で 籠ってしまうことにより、放熱性能が著しく低下する可能性があります。

ヒートシンク放熱のイメージ

また、素子のサイズが小さいながらも発熱量が大きい場合は熱がヒートシンク全体に伝わり切らない、いわゆる「局部発熱」の状態に陥る場合が あります。熱の広がりを促進するために、素子とヒートシンクの間に銅板などのヒートスプレッダを配することで改善が見込める場合があります。

2-2)自然空冷方式

自然空冷方式はヒートシンクの配置方向によって放熱性能が変動します。

垂直配置での性能を 100% とした場合、他で示す配置では、それぞれ 4% ~ 40% 程度 性能が低下してしまう場合があります。

ヒートシンクの自然空冷方式の種類
ヒートシンク放熱のイメージ

フィンが地面から垂直に立った姿勢が最も放熱効率が良いのは、自然空冷方式が空気の対流を利用しているからです。

自然空冷方式においては、必ずしもフィンの枚数が多ければ良い=放熱面積が多ければ多いほど良いとは限りません。熱は輻射によってヒートシンクの 表面から空気に伝わりますが、距離が近いと隣のフィンが熱を吸収してしまうためです。

ヒートシンク放熱のイメージ

2-3)強制空冷方式

強制空冷方式の場合、ファンの位置がヒートシンクから離れていたり、ファンとヒートシンクの間に遮蔽物があるとヒーシンクに風が当たらず、 強制空冷方式本来の放熱性能を発揮できません。場合によっては数 10% もの性能ダウンが発生します。

ヒートシンク強制空冷方式の例

自然空冷方式から強制空冷方式への変更

強制空冷方式の場合、ファンの風がヒートシンクにきちんと当たる構造であれば、20% ~ 2倍の放熱性能の向上が見込めます。このためヒートシンクの 小型化も可能です。

一方でファンによる振動や騒音が、お客様における電気的・構造的信頼性評価項目の 変動要因となってしまう可能性に対して注意が必要です。

以上、今回はヒートシンクをご選定頂く際の注意事項として、放熱に必要な熱抵抗値の計算方法と、冷却方式や配置について説明いたしました。

ヒートシンクをご検討頂く際に一助ともなれば幸甚です。

オリジナル動画
【技術解説動画】ヒートシンク放熱特性試算のポイント

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Global Design Notes は、エンジニアのための役立つ技術情報を掲載した WEB 連載です。

  • 発行元:グローバル電子株式会社
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